REPORT アーストラベルの旅

茨城大学附属小学校5年生の農業探究プログラム#2「農業」をテーマに自分ゴト化

教育旅行

自分たちが生きる未来に進むべき道を見つける

昨年5月より茨城大学教育学部附属小学校5年生と始まったプロジェクト。国が目指す未来社会、Society5.0(※1)の動画を見て、児童は自分たちが調べていくテーマとして「農業」を選択。昨年夏には、茨城町の農家さんを訪ねました。

※1 Society 5.0とは:狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において国が目指すべき未来社会の姿として提唱。

なぜ「農業」を選択したのかというと、Society5.0のさまざまな未来の事例を見る中で、自分たちの身近にあって話を聞くことができ、実際に見ることができるものは農業なのではないかと児童たちが考えたから。こうして「農業探究」が始まりました。

茨城町の農業体験では、農作業を一つひとつ手で行うスタイルから機械を使う大規模な農業まで、いろいろな農業のかたちを学びました。そこで児童たちはさまざまな課題に気づき始めます。

機具はあるけど手を使って動かさなければならなかったり、遠く離れた水田の状態や畑の状態を人が見に行かなければならなかったり。規模が大きくなければ機械化は進まず金銭的に導入が難しい…など、児童たちは農家さんの声を実際に聞くことで、Society5.0の社会へ向かうにはまだ体制が整えられていないのではないかと感じたようです。

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そのような中で、実際に水田に行かなくても現地の様子や水温などのデータがスマートフォンに送られるなど、ICTを活用した水田管理をしている農家さんの取り組みを知ったことをきっかけに、児童たちは考えました。

「農機具メーカーさんに話を聞けば、機械がどこまで進化しているのか、自分たちが生きる未来に進むべき道がもっと見えてくるのでは」と。

農業機械メーカーさんを訪ねて

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そして今回、茨城県で最新の農業機械の情報発信基地として2021年7月に誕生した「ヤンマーアグリソリューションセンター関東」さんと、「土」へこだわり、農機具の開発・製造・販売を行っている「スガノ農機株式会社」さんを見学をすることになりました。

ヤンマーアグリソリューションセンター関東さん(以下ヤンマーさん)では、動画を交えた説明を受け、タブレットを手にショールームを見学。ドローンやコンバインなど、無人でも万全に作業が行える機械など、最先端の機械の説明を受けました。

ヤンマーさんでしか輸入・販売していないアメリカの大きなトラクターへの試乗のほか、整備工場の様子も見せていただきました。

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迫力のある農業機械の見学の後は、職員の方への質問の時間。事前に学習して調べてきたことや茨城町の農業体験を通して感じた内容、当日の見学で気になったことなどを児童たちは質問します。

児童
「茨城町へ農家体験に行った時に、手で作業を行っている農家さんがいましたが、その農家さんをどう思いますか?」

ヤンマーさん
「手でやられる方はこれまで作業した中で自分に合っている作業をされているのだと思います。我々は機械を売っている会社なので、農家さんが困った時に機械を提案できたらと思っています。」

児童
「今までにできなかったことができた時の喜びはどんな感じですか?」

ヤンマーさん「農家さんが新しい機械を使って笑顔になった時や農家さんの困っていることを解決できて喜んでもらえた時ですが、テストで100点を連続で10回とった時のような感じでしょうか(笑)。農家さんの笑顔を直接見ることができた時が嬉しいです。」

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土へのこだわりのある「スガノ農機さん」の工場見学では、農機具を組み立てる様子について説明をいただいたのち、農機具の歴史、土をよくするために新しい機械を開発している話をお聞きしたほか、プラウという土を耕す農機具を実際に動かす様子を見学させていただきました。

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それぞれの見学場所では、「トラクターの種類についての質問」のほか、「農機具の試作品で失敗はどれぐらいあったか」、「これからどんな製品を作っていくのか」など、児童たちから多くの質問が出ていました。

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農家さんと農業機械メーカーさんの想いに触れて

機械化やICTの導入は持続可能な農業を行うためには重要な要素かもしれません。しかし農家さんにはさまざまな事情があります。

児童たちは農家さんを見学して生の声を聞き、さらに農機具メーカーさんを訪ねることで農業の現状や未来の話を聞くなど、両者の想いに触れて視野を広げていきました。

現場で働く大人や関係者へ直接話を聞くという行動は、コミュニケーション能力を養うこととしてとても重要です。

体験学習の際には事前に見学する企業等を調べているのですが、その上で実際に見て・聞いて・知ったことをもとに「問い」を立てて、自分ゴト化。自分たちの持った疑問についてさらに意見を交換し、物事の本質に迫り、見極め、課題解決をしていく力をつける「探究の授業」でもあるこのプロジェクト。

社会に関わり、自分で考えアクションを起こしていくこと、解決できる力を養っていくことの大切さ。これからの社会を生き抜くために必要な力を身につけていきます。

記事:ホシカワリエコ