農業×テクノロジー体験ツアー/1日目
今回初の首都圏中学校を対象に希望者を募り実施した、特別企画「ミライの食を拓く!農業×テクノロジー体験ツアー」。
本格的な農業体験や最新テクノロジーへの理解、課題解決に向かって熱く動く大人たちに触れることで、探究の楽しさを知ってもらいたいと実施したものです。
今回は、そんな本ツアーの様子をレポートにてお届けします。
【1日目】「自ら」ツアー参加を決めた理由とは

ツアーのスタートは、つくば市にある交流拠点・co-en(コーエン)。ツアーの流れの説明やツアーに関わるスタッフの自己紹介の後、首都圏各所から集まってくれた中学生の皆さんに自己紹介をしていただきました。
自己紹介に加えて、ツアーに参加した理由を聞いてみると
・農業とテクノロジーの関係性を知りたい
・今の日本の農業の現状はどうなっているのか
・将来の仕事の選択肢として農業を考えている
など、各々がツアーに対する思いを語ってくださり、これから始まるツアーへの期待感が高まっていました。
【1日目】身近な食の変化を知る(JA茨城県中央会)

最初のプログラムは、JA茨城県中央会(茨城県農業協同組合中央会)広報担当の萩谷茂さんをお招きし、「日本と世界の農業について」をテーマにお話をいただきました。
まず、農業を構成する要素として、水や土地などの環境を含めた農地があること、農作物の生産者・消費者がいること、そして農業を支える技術があるということが語られました。
特に環境の変化は農業に与える影響が大きく、昨年は暑さが原因で、例年に比べてお米がとれなかったという現状も。
今一番に考えなければならないのは、これ以上地球環境が悪化しないように、また生物の多様性を維持しつつも、経済の活性化との両立をしていかなければならないということだそうです。
それは日本だけの問題ではなく、世界も同じ状況だといいます。そのような状況の中で、私たちの食卓を支える農業の未来を考えることは非常に大切なことだと話す萩谷さん。
日本においては、農林水産省が生産力の向上と持続性の両立を目指し掲げた「みどりの食料システム戦略」においては、化学合成農薬の50%削減を目指した宣言もされています。
持続可能な農業を実現するためには、環境の保護と経済活性化の両立、そして、都市と地方でバランスよく農業に取り組んでいく必要があるということが語られました。
萩谷さんの話を聞き参加者からは、
・みどりの食料システム戦略で掲げた目標は達成できそうなのか
・日本における遺伝子組み換え食品について
・所有する資源や資産を他人と共有するシェアリングエコノミーの農業における実態
といった質問がなされ、農業に対する関心の高さが伺えました。
【1日目】新鮮な野菜を消費者に届ける(藤枝農園)

午後に向かったのは、藤枝農園。茨城町で水菜を中心に野菜の生産や販売を行っている農園です。私たちを出迎えてくれたのは、代表の藤枝佳史さんをはじめとする、従業員の皆さん。藤枝さんより、まずは農園についてお話をいただきました。
藤枝農園で特に力を入れているのは、市場外流通。これは、卸売市場を経由しない農産物の取引のことをいいます。これにより消費者に届くまでの時間が短くなり、新鮮な野菜を届けられるそうです。
そんな藤枝農園では、野菜の袋詰め体験やハウスの見学、実際に使用しているトラクターなどを見せていただきました。
400棟もあるハウスの数に驚くとともに、スーパーに出荷される前の水菜や小松菜を丁寧にすばやく扱う従業員の様子を見たり、実際に袋詰めを体験したことで、その難しさも感じたようでした。

また、どんな肥料を使用しているのか質問する生徒もいて、新鮮な野菜が私たちの食卓に届く過程をしっかりと理解できたことと思います。

【1日目】安心・安全な食にこだわる(ファームランドさいとう)
次に向かったのは、ファームランドさいとう。茨城町でお米や麦、大豆などを栽培し、6次産業化に取り組む農園です。
煮出した麦茶とともに、私たちを出迎えてくれたのは、代表の斉藤卓也さん。ファームランドさいとうでは、安心・安全にこだわり、主にアイガモ農法を取り入れたお米の生産を中心に行っています。

アイガモ農法とは、農薬や化学肥料を一切使わず、アイガモと一緒に育てる有機栽培のお米のこと。
水田に放たれたアイガモたちが雑草や害虫の駆除をしてくれ、安全なお米が育っていきます。最後に、役目を終えたアイガモたちは鴨飯として消費者に届けられ、ここで一つの循環が生まれています。
農園では、茨城県生まれのオリジナル米「ふくまる」をはじめとする7種類ものお米が生産されています。それは、作業の時期をずらすため。同じ品種だけを作ると、作業の時期が重なることから、リスク分散するためにも複数の品種を育てています。
安心・安全でおいしいお米を届けたい、人手不足や高齢化など農業が抱える課題に斉藤さんなりの方法で上手に取り組んでいます。

斉藤さんの食に対する思いを生徒たちが真剣に受け取っている様子が見られました。食に対する理解がより深まったかもしれません。

【1日目】地元を自らの視点で盛り上げる、若者たちとの交流会

初日の夜、最後に向かったのは、阿字ヶ浦海岸が目の前に広がるコミュニティースペース「イバフォルニア・ベース」。
この場所では、地元・ひたちなか市を盛り上げようと奮闘する、20代の皆さんとの交流会が行われました。
交流会に参加してくださったのは、
・戸板咲紀さん(株式会社カゼグミ/茨城の”いつも”が分かるメディア SETTEN発起人)
・川島飛鳥さん(talentbook株式会社/ゲストハウス「水戸宿泊交流場」の運営・広報)
・西村祐貴さん(YuGrace株式会社 代表取締役
ひたちなかグルメ 代表)
3人から自己紹介とそれぞれの活動内容についてお話をしていただいた後、3つのグループに分かれて、交流会を実施しました。
中学生と比較的年齢の近い20代と話す中で「身近なものの中に新たな発見があった」などというツアーの感想だけでなく、茨城と東京、お互いの良いところを話すなど、打ち解けた様子を見せてくれました。

1日目の最後にふさわしい交流会となったことと思います。
ツアー2日目の様子は後日公開予定です!
写真 佐野匠
取材・文 谷部文香