REPORT アーストラベル水戸の旅

先生インタビュー#4~水戸市立双葉台中学校 角谷先生~

先生インタビュー

今回は、水戸市立双葉台中学校の校長、角谷校長先生に「先生という仕事の魅力」についてインタビューさせていただきました。

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角谷先生

【探求学習を通した「生きる力」の習得】

 角谷先生が生徒の指導で大事にしているのが「探求学習」です。いわゆる「総合的な学習の時間」ですが、角谷先生は探求学習と呼びます。
いろいろな問題に対して生徒が自分で考えて、何もないところから答えを出す。そんな「生きる力」を子どもたちには身に着けてほしい、と先生は話します。

 「特に印象深かったのは、以前、小学校に赴任していた時に担当した2年生たちです。探求学習に、田んぼでお米を育てる時間がありました。大人たちが準備しようと思えば道具や育て方も不自由なくできるところをあえて、何も教えずにやってもらいました」
 「すると、田んぼにある砂利を取るために、子供たち自ら『耕運機を貸してほしい』と言い出しました。育った稲が鳥に食べられてしまうのを防ぐために、ししおどしで音を立てよう、などと自分たちなりに工夫しました」
「結局、収穫まで残った稲はほんの少しでした。でも、子供たちにとってその稲は一生の思い出だと思います。米作りを通して自分たちで、耕し方や鳥対策を自主的に調べました。経験に裏打ちされた知識は、ずっと生きていくんです。そんな経験を生徒たちには積ませてあげたいですね」

確かに、小さい頃に自分で一から作ったものはずっと記憶に残りますし、自信にも繋がりますよね。そういう経験ってとても大切だと、私も強く思いました。

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【双葉台中の『ミソアジサ・カチ』】

「『ミソアジサ・カチ…?』
 角谷先生からこの言葉を聞いて、はじめは頭の中がはてなマークでいっぱいになりました。(笑)
「『ミソアジサ・カチ』とは、双葉台中学校の生活目標。「ミ」は身なりを整えること、「ソ」は掃除をすること、「ア」は挨拶をすること、「ジ」は時刻を守ること、「サ」は最後まで話を聞くこと、「カ」は感謝すること、「チ」は挑戦することです。

 「毎月、『ミソアジサ・カチ』のうち、どれかひとつを学校の生活目標に掲げています。双葉台中の生徒は全員、何を見なくても『ミソアジサ・カチ』を説明できると思いますよ。(笑)」
 「まずは生活が落ち着くこと。これができて初めて勉強にも集中できます。全校生徒で同じ目標に取り組むことで、全体として何が必要で何が欠けているのかも分かるようになります」

 実際、校舎の至るところに『ミソアジサ・カチ』を呼びかける提示物がたくさんありました。驚くべきはそのクオリティです。手書きではなく、パソコンのソフトを使って制作されたポスターは、街に掲示されていても違和感がないほどに分かりやすく、ユニバーサルなデザインでした。
 これらの掲示物は、生徒たちが自主的に制作したのだそう。「ミソアジサ・カチ」の教えを理解し、生徒同士で啓発していこうとする心がけを感じました。


【ブラックのイメージを変えたい 先生は意思選択できる時代】

「残念ながら現在、先生になりたがらない人が多いです。ブラックのイメージが根強く、働き方改革が急務です」

 失礼ながら私も、先生という仕事には少なからずブラックで激務なイメージを持っていました。しかし、角谷先生の話を聞く中で、そのイメージは確実に変わり始めているのだと思いました。

 「双葉台中学校では、休日に部活動の指導をするか、しないかを選択できます。そして空いた人員は地域部活動指導員が入ることで補います。これからは、先生も意思選択できる社会にしなければいけません」
 「先生に体力的・精神的な余裕が生まれれば、授業に力が入れられます。生徒にも細やかに目配りできるので、SOSにいち早く気づくことができます。先生にとってのメリットでもあるけど、結果として先生の働き方を変えることは、生徒のためになるんです」
 「学校は『チーム』です。新人の先生ひとりに何かを任せることは絶対にないですし、最低でも先生は新人とベテランで3人のチームを組んでもらいます。新人はベテランの背中を見ながら成長することができる環境が整っています。」


【さいごに】

 角谷先生は、部活動の顧問のあり方など、新しい取り組みをいち早く取り入れている点が印象的でした。「挑戦」という言葉が似合う先生だと感じました。角谷先生はインタビュー中、「とりあえずやってみようという気持ちです。問題が起きたらその時考えればいいんです」と仰っていました。めっちゃかっこいいですよね。双葉台中の生徒さんたちを見ていたら、この角谷先生の行動力、そしてパワーが生徒たちにも伝播しているのだろうな、と思いました。

インタビュー・執筆/髙橋葵
撮影/橋本理沙