REPORT アーストラベルの旅

先生インタビュー#5~水戸第二高等学校 石井校長先生~

先生インタビュー

今回は茨城県立水戸第二高等学校の石井校長先生にインタビューさせて頂きました。実は、水戸二高は私の母校。インタビューの為、久々に学校を訪問させて頂きました。

石井先生のお話を伺う中で、これから先生を目指す方たちだけでなく、どんな人にとっても人生のヒント・エールとなるような気付きを頂きました。

目次

  1. 【先生になった経緯】
  2. 【すべてのことが「教員」につながる】
  3. 【自己開示できるようになれ】
  4. 【3年間で完結しない仕事】
  5. インタビューを終えて

【先生になった経緯】

「僕は全然教員なんか考えてなかった」

教員になった経緯を伺ったところ、予想とは正反対の言葉が返ってきました。

高校2年生までは医学部への進学を考えて理系だったという石井先生。
たまたま、高校3年生に上がるときに「日本史が一人空いている」とアナウンスがあり、手を挙げたことで、進路が文系に変わったのだそう。その後の進学で文学部を選ぶ際、お父様から教員免許を取るように言われたことがきっかけで、先生になったそうです。

元々教員を目指していたわけではなかったという石井先生。しかし、先生になるまでに経験してきた様々な体験が、教員の仕事につながってきたと言います。

【すべてのことが「教員」につながる】

インタビューの中で驚いたのが、石井先生の話す数々のエピソードです。

つい笑ってしまう学生時代のやんちゃなお話や、忘れられない失敗談、印象に残っている先輩教員の言葉など、本当に幅広いお話を伺いました。インタビューの間、まるで小説を読んでいるような、一緒に先生の記憶を追体験させて頂いてるような気持ちになりました。

例えば、雪かきのエピソード。
学生時代、冬になるとスキー場のペンションに居候で働いていたという石井先生。雪かきでは、スコップに灯油の余りを塗ることで、雪がくっつかないように工夫をしていました。油を塗っていないスコップをこっそり他の人に渡して、いたずらしたことも。雪がたくさんくっついてしまうので、その人はスコップをふっとばしてしまったそうです。

「水と油の話って小学校の理科で習ってるよね。でも使えない知識で覚えられない。そこでこういう話をすると、子どもたちの記憶に残る。」

いたずらの話と一緒にね、と話す石井先生。確かに忘れられなくなりました。

「教員になってみて、それまでしてきたいろんな経験が『つながってきた』と感じることがいっぱいあった。今振り返ってみると、自分がやってきたことって『教員になるため』にやってきたことじゃない、一つ一つ余計なことだった。」

他にも、こんな話をしてくれました。

倉庫のアルバイトをしていた時、他の人が原因で起きた失敗が、当時学生だった先生のせいにされてしまったことがあったそうです。

「ああ世の中って不合理だなって思った。でも、その時同じラインにいたおじちゃんがよくみてて、『学生、よく我慢したな』って昼飯ご馳走してくれたりした。僕からすると、自分は遊ぶ金のためにバイトをしていて、一方でこのおじちゃんは、生きていくためにこの仕事をしている。それでもこうやって気を遣ってくれるってすごい、自分が大人になったときに同じことができるかな、と。」

こんないろんな経験が、実は全部、教員の仕事につながってきたと話します。先生は、教員を目指す子どもたちに、塾講師や家庭教師もいいけれど、そうじゃないアルバイトも経験すると良いとアドバイスするそうです。

すべてのことが今、教員の仕事につながっている。経験してきたいろんなことを、隠さずに話すから子どもたちはなつくんだと思う。きれいごとじゃなくて、失敗した話も話すから。逆に言うと、子どもたちに『失敗してもいいんじゃん、それが必ず次の成功への種になるし、つながっていくよ。』と伝えることができる。

一見、教員を目指すこととは直接関係しない、様々な体験をすること。成功したことだけでなく、辛かったことや失敗したことも含めて、本物のエピソードを伝えること。それが、子どもたちに響く道具になるのだと感じました。

【自己開示できるようになれ】

「自分が一生懸命になったもの、その過程で絶対失敗していることがあるはずだよね。そこを大切に、そこを自己開示できるようになったらいい先生になるよ」

水戸二高の生徒で教員を目指す子たちに、こう声をかけているそうです。
先生は、あえて学校生活につまずいている生徒にも「先生になってごらん」と伝えているとのこと。

「『サボりたい、苦しい』って思うことがあるでしょう? でも、そうなったことがない人って、(生徒のその苦しさに)気が付けない。もがいてもがいてなんとか、進級・卒業したから、『先生も苦しかった。でもね、今考えたら大したことないんだよね』っていえる。『なんでできないの』っていうのとは全然違うでしょ。」

一見遠回りに見える失敗やつまずきも、将来どこかで、誰かの背中を押す役に立てることができる。先生のお話は、教員を目指す人だけでなく、どんな仕事をしている人にとっても、力強いエールになると感じました。

【3年間で完結しない仕事】

石井先生がとある高校の校長先生になったとき、新任時代に担任をもった生徒たちがお祝いに来てくれたそうです。

その時の一人からかけられた言葉を教えて頂きました。

「当時の俺は先生の言葉が頭に入ってこなかった。でも、今なら先生の話がよくわかる。」「今俺は5人若いのを雇ってる。そいつらは他のところでは長く続かないけど、うちは辞めない。先生が当時俺らにやってくれたことと同じことをそいつらにしてる。先生のやり方でやってる」

こう声を掛けられたとき、「教育って3年間で完結じゃないんだ」と、強く思ったそうです。

「教育は3年間で結果出すことも大事なのかもしれないけど、その子の10年後20年後、そこでその子がどうなっているかっていうのが大事なんだっていうことをしみじみと思った。」

先生と関わる期間は、その学校に在籍している数年間のみですが、このように卒業後の人生にもずっと影響を与えることもある。先生という仕事の大きな意義を改めて感じました。

インタビューを終えて

先生へのインタビューとして貴重なお時間を頂きましたが、私のための授業の時間だったのではないかと感じてしまうくらい、たくさんのメッセージが胸に刺さりました。

石井先生は、この3月で水戸二高をご退職され、新しいステージに向かわれます。ぎりぎりですが、石井先生の教え子になることができて本当に嬉しかったです!

「『成長中』って考えれば大した問題じゃない。」
先生から頂いた言葉を忘れずに私も頑張りたいと思います。

インタビュー/記事 飯塚